平成22年度日本計算工学会贈賞報告
日本計算工学会では、計算工学に関わる学問および技術向上の発展に貢献した会員を称えるため、学会賞を授与しております。学会賞には、(1)計算工学大賞、(2)功績賞、(3)川井メダル、(4)庄子メダル、(5)論文賞、(6)技術賞、(7)論文奨励賞、(8)功労賞があります。計算工学大賞は、計算工学の学術的な発展に対して世界的に顕著な貢献のあった方(会員である必要はありません)に授与されます。功績賞は、計算工学の発展に著しい貢献のあった会員を表彰し、その功績を称えることを目的としています。川井メダルは、本学会の初代会長川井忠彦先生の功績を記念して設けられた賞で、若くして、計算工学分野において顕著な学術・研究成果を挙げ、計算工学の発展に多大な貢献をした会員を表彰し、その功績を称えることを目的としています。対象者は、受賞年の4月1日現在で年齢が50歳未満の会員です。庄子メダルは、本会の民間出身の初代会長を務めた庄子幹雄氏の功績を記念して設けられた賞で、産業界における計算工学の発展に特別の貢献のあった会員に授与されます。論文賞は、計算工学の発展に顕著な貢献をしたと認められる論文の著者である会員に授与されます。技術賞は、計算工学の発展に顕著な貢献をしたと認められる技術、作品の開発者である会員に授与されます。論文奨励賞は、計算工学の発展に顕著な貢献をしたと認められる論文の著者で、今後の発展を奨励することが適当と認められ、受賞者の年齢が受賞年の4月1日現在で40歳未満の正会員または学生会員に授与されます。また、功労賞は、本学会の諸活動に顕著な貢献のあった会員を表彰し、その功労に報いることを目的としています。
表彰委員会における厳正な審査の結果、平成22年度につきましては下記の方々が授与され、5月19日に開催されました総会において表彰されました。
平成22年度贈賞者リスト
(1)計算工学大賞
- Peter Wriggers(Leibniz University of Hannover 教授)
- P. Wriggers 氏は、接触問題の数値解法、分岐・座屈現象を含む有限変形問題の有限要素解析アルゴリズム、高性能有限要素、非均質材料のマルチスケール解析手法などの計算手法の開発に長年にわたり携わり、非線形固体計算力学の分野に多大な貢献をした。
また、氏は「Computational Contact Mechanics」や「Nonlinear Finite Element Methods」等の著名な教科書を著すと共に国際ジャーナル「Computational Mechanics」の編集委員長のほか、IACMの副会長を務めるなど、世界の計算力学分野を牽引してきた。
(2)功績賞
- 大西 有三(京都大学 教授)
- 大西氏は、岩盤工学における不連続性岩盤の挙動解析、地盤・岩盤流の地下水流動および汚染の解析手法、ならびに精密写真測量による地盤・岩盤変位計測技術について、その高度化と応用に関する研究を進めてきた。特に、不連続変形解析法の開発およびこれを用いたキーブロック安定解析に関する研究成果は、国内外でその業績が高く評価され、世界的な第一人者として種々の学会講演会で招待講演を行っている。
また、当該分野の数々の国際会議を実行委員長として企画・開催し、その発展と普及に貢献した。また、氏は2002年度~2005年度には本学会の理事を務め、学会の運営に尽力してきた。 - 坂井 藤一(FS 技術事務所 代表取締役)
- 坂井氏は、薄肉構造の3次元挙動解明に有限要素法を導入するなど、有限要素法の創成期からその発展に関わり、企業において多くの計算力学に関する論文を執筆されると共に設計・開発業務に計算工学手法を活用し計算工学の発展に尽力してきた。また、多くの大学にて客員教授や非常勤講師を勤め、計算工学の有用性を学生に啓蒙・教育してきた。
また、氏は1997年度~2002年度には本学会の理事、2000年度~2002年度には副会長を務め、学会の運営に尽力してきた。
(3)川井メダル
- 鈴木 克幸(東京大学 教授)
- 鈴木氏は、特に最適設計、ボクセル解析、マルチスケール解析の分野において先進的な研究を行っている。特に最適設計に関しては、全く新しい構造の創成手法として、均質化法を用いた位相最適化の研究を世界に先駆けて行い、位相最適化を実用の域まで高めた。また同氏は、提案手法を機械、土木、建築、造船といった様々な分野に横断的に適用する一方、バイオメカニクス、スポーツ、CGといった新しい分野への適用、実用化を進めている。
また、氏は本学会の設立時から学会の運営に尽力し、事業企画小委員会幹事、論文委員会幹事、論文委員会委員長などを務め、2007年度からは本学会の理事を務めている。
(4)庄子メダル
- 山村 和人(新日本製鐵)
- 山村氏は、計算工学を実際のものづくりに適用する視点から、数理最適化手法・逆解析手法の研究と応用、不連続体構造解析法の研究と応用、粒子法の研究と応用、プロセスモデリング、数値構造解析による設備設計・保全と幅広い応用研究で実績がある。また、企業における数値解析に関する技術者の育成に尽力している。さらに、計算工学講演会、WCCM、等でも講演を行い、企業現場での計算工学問題を広く外部へ公表している。
また、氏は本学会の設立にも深く関与し、2009年度からは本学会の理事を務めている。
(5)論文賞
- 小川 慧(東芝)、青木 尊之(東京工業大学)
- 「GPUによるマルチグリッド法を用いた2次元非圧縮性流体解析の高速計算」 日本計算工学会論文集 No.20090021
本論文は、非圧縮性流体方程式をGPUにより高速に計算する手法を様々な観点から論じたものであり、CPUより圧倒的に高速計算が可能であることを実証している。本論文はGPU計算の指針を与えるものであり、独創性、実用性、将来性に大変優れている。 - 西浦 泰介(海洋研究開発機構)、坂口 秀(海洋研究開発機構)
- 「GPUを用いたDEMの高速化アルゴリズム」日本計算工学会論文集 No.20100007
本論文は、粒子法の一種であるDEMをGPUにより高速に計算する新しい並列アルゴリズムを提案し、高い有用性を示している。提案手法は、DEM以外の粒子系シミュレーションにも適用性があり、独創性、実用性、将来性に大変優れている。
(6)論文奨励賞
- 上原 拓也(山形大学)
- 「一方向凝固におけるセル状組織形成と応力分布のフェーズフィールドシミュレーション」日本計算工学会論文集 No.20090023
本論文は、一方向凝固過程で形成されるセル状組織内部の微視的応力分布を高精度に解析するために、フェーズフィールド法を用いる方法を提案し、その有効性を示している。本論文は、独創性、実用性、将来性に優れた論文で、今後の研究の発展を特に期待することができる。 - 仲村 岳(成蹊大学)
- 「均質化法による複合材のクラッシュ解析(その1:大変位弾性問題への適用)」日本計算工学会論文集 No.20100011
本論文は、ハニカム材の衝撃圧壊特性を高精度かつ高速に解くための手法として、均質化法と動的陽解法を用いる手法を提案し、その有効性を示している。本論文は、独創性、実用性、将来性に優れた論文で、今後の研究の発展を特に期待することができる。
(7)功労賞
- 佐藤 一雄(防災科学研究所)
- 佐藤氏は、わが国における原子力・防災分野におけるスーパーコンピュータの利用およびシステム開発を主導すると共に、2001年度~2005年度において、日本計算工学会が参加した研究開発プロジェクトを推進した。
また、氏は2002年度~2007年度に、本学会の理事を務め、学会の運営に尽力してきた。

総会懇親会にて(前列左より:大富浩一会長、山村和人氏、坂井藤一氏、川井忠彦元会長、庄子幹雄元会長、後列左より:上原拓也氏、小川慧氏、仲村岳氏)

